T&Bの腕時計が出来上がるまで 〜文字板その1〜

すっかり秋も深まりました。
公園や街路樹の紅葉が色鮮やかで本当に美しい季節ですね。

前回のブログではコンセプトからデザインを決定するまでのお話をさせていただきました。

デザインスケッチから実物のサンプル製作、そして量産へ、ここからはTime&Bouquetの時計が出来上がるまでの製造プロセスをご紹介していきたいと思います。

今回は、文字板についてです。

文字板は時を知るためのもっとも重要なパーツです。
Time&Bouquetは、より美しく感動的に時を表現するために3つの時計の文字板にそれぞれ緻密なこだわりを詰め込んでいます。

彫刻した「時目盛り」

 

コレクションのページでもご紹介していますが、ミュゲとコクリコは、現在国内ではほとんど使われていない、 金属文字板に時目盛を直接彫刻する手法を復刻させています。

復刻したかった理由は2つあります。

一つは、最近あまり見ないとても繊細で魅力的な表現だから。
もう一つは、金属文字板ならではの手法だからです。

文字板の目盛りは「インデックス」「時字」または「マーカー」などと呼ばれますが、その時間の表現は、手書きや印刷といった平面的なものから立体へと進化してきました。
かつてその立体表現の始まりは ’盛る’ のではなく ’彫る’ 手法でした。

現在は数字や棒型の別パーツを文字板に植え込む「植字」と呼ばれる技術や、自由な形の表現が可能な「メッキのシール」が主流です。

高さとボリュームのある植字や、トロンとしたシールとは異なり、 彫りの反射は控えめでとても繊細な光を放ちます。 金属でしかできない手法です。
金属文字板の魅力は、彫刻だけでなく、打ったり曲げたり、熱を加えたり、塗装やメッキを重ねたりと表現方法が実に豊かな事です。

昨今、多く見られるソーラーの時計は光を透過させるプラスティック製が主となりますので、 金属とはまた別の魅力がありますが、深みや重厚感、高級感はなかなか出す事はできません。

腕時計の誕生から進化してきた金属文字板の歴史をたどり、美しい仕上げを再発見し、中でも消えつつある手法でアンティークウォッチでしか見られないような文字板を作る事ができるのも今が最後かも!という思いで、この手間のかかる文字板をお願いしました。

 

ですがすぐに綺麗なものができるわけではありません。
最初の試作品は、リーフの形も彫刻面もこんなに歪でガビガビでした。

失敗したミュゲの文字板サンプル

 

こんな小さな文字板を彫刻するのに、こんなに大掛かりな器具にセッティングし、1箇所1箇所、丁寧に彫っていくのです。

文字板を機械にセッティングする場面

ミュゲのリーフ型のカットは角度と深さが命。
一枚の文字板に8箇所、それも文字板は楕円型!

単なる円形の文字板と比べ、器具のセッティングに手間がかかるため、本当に大変です。 この工程、最近の時計製造では見ることはできないです。

文字板を加工機械にセッティングした状態

 

こちらはコクリコの目盛り。ルーペで覗きながら1箇所1箇所、慎重に。

目盛りをキズミで覗きながら1箇所ずつ削る職人

このようにして彫刻した面は、当然金属の肌がむき出しになってしまい、時間とともに腐食してしまいます。それを防ぐために彫刻した部分にさらに金メッキを施します。

こうして何度も試作を繰り返して、
コクリコは綺麗な丸目盛り、 ミュゲはシャープで美しいリーフ型を彫刻することができました。

ミュゲの文字板のクローズアップ

コクリコの文字板のクローズアップ
はじめと全然違いますね。

ミュゲとコクリコはこの「彫刻」と「植字」の光のコントラストも魅力です。 この「植字」、よく見ると上面の仕上げが違うのわかりますか。

ミュゲのリーフ型の植字はダイヤカットという筋状の目付けを施し、コクリコの植字は綺麗な鏡面にカットされています。 彫刻のやさしい反射光を損なわないよう、存在感のあるこの「植字」の ツヤを抑えたり、高さや大きさなどボリュームを小さくしたり、バランスを考えて色々な工夫を施しています。

花と一緒に並べられたコクリコとミュゲ

文字板の仕上げは「旭光」といいますが、字のごとく旭のような放射状の目付けです。
ブラシで擦って付けるこの目付け、腕時計ではスタンダードですが、こだわるととても差のでてしまう仕上げなのです。
Time&Bouquetの「旭光」は、ギラつきを抑えた、角度によって見え隠れする繊細で上品な仕上げとなっており、透明の層を重ねて淡いカラーの深みを出しています。

 

まだまだ語ることは沢山ありますが、長くなってしまいましたのでこの辺で。
奥の深い文字板ワールド、興味を持っていただけたら嬉しいです。

次回はネルの白い文字板についてです。

ここまで読んで下さいましてありがとうございました。

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